相続登記、令和9年3月31日という区切り
――昔の相続も対象です。まずは「どこに何があるか」から
八月も今日で終わりですね。朝晩の風に涼しさが混じるようになると、そろそろお彼岸か、久しぶりに実家に顔を出そうか、とお考えの方も多いのではないでしょうか。
実家の話になると決まって出てくるのが、「あの土地、名義はどうなっているんだろうね」という一言です。ご相談にみえる方も、はじまりはこの何気ない会話だったとおっしゃいます。実はいま、その「名義」に、ひとつの区切りの日が近づいています。
「相続したら3年以内に」がルールになりました
令和6年4月1日から、相続で不動産を取得した相続人は、相続の開始とその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務づけられました。
登記とは、法務局にある不動産の「台帳」に、この土地・建物は誰のものかを記録してもらう手続きです。これまでは「いつかやればいい」で済んでいたのですが、正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になり得るとされています。
過料と聞くとドキッとしますが、これは刑罰の罰金とは別のものです。法務省は「正当な理由」の例も示しています。相続人が極めて多数で戸籍集めに時間がかかる場合、遺言の有効性が争われている場合、申請する方が重い病気の場合など。事情があればきちんと汲まれる仕組みです。
見落とされやすいのは「昔の相続」です
今日いちばんお伝えしたいのは、ここです。この義務は、令和6年4月1日より前に起きた相続にも及びます。十年前、二十年前に亡くなったお父様の名義のままの土地や建物も、対象になるということです。
その場合の期限は、令和9年(2027年)3月31日まで(または知った日から3年以内の、いずれか遅い日)とされています。今日が令和8年8月31日ですから、残りはおよそ七か月です。
「とはいえ、兄弟が多くて話がまとまらない」。よくうかがうお話です。そうした方のために相続人申告登記という簡易な手続きがあります。自分が相続人だと法務局に申し出ておけば、申し出たご本人については、ひとまず義務を果たしたものとみなされます。他の相続人の足並みがそろわなくても、お一人で申し出ができます。
ただし、これは権利関係を公示するものではありません。売却などの場面ではあらためて相続登記が必要になります。あくまで「ひと呼吸おくための仕組み」とお考えください。
「どこに何があるのか」を調べられる制度が始まりました
そもそも困るのが、「うちの名義の不動産が、どこに何件あるのか分からない」という状態です。田や山林など、ご本人ですら把握しきれていない例は珍しくありません。
そこで令和8年2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まりました。ある方が全国のどこに不動産を持っているかを、一覧の証明書にしてもらえる制度です。請求できるのは登記名義人ご本人とその相続人など。全国どの法務局でも窓口・郵送・オンラインで請求でき、手数料は書面請求が1通1,600円、オンライン請求は交付方法により1,500円または1,470円とされています。
ただし万能ではありません。登記簿上の氏名・住所を手がかりに検索するため、住所が昔のままだと拾えないことがあります。「まず全体を見渡す地図」と考えて、足りない分は固定資産税の通知書などと突き合わせるのが確実です。
今日の3つのポイント
- 相続で不動産を取得したら、それを知った日から3年以内に相続登記の申請を(令和6年4月1日から義務化)。
- 施行前の「昔の相続」も対象。その期限は令和9年3月31日まで(または知った日から3年以内の、いずれか遅い日)。
- 話がまとまらないときは「相続人申告登記」、所在が分からないときは「所有不動産記録証明制度」を。
※ 期限の起算日や必要書類はケースにより異なります。ご自身の場合は法務局または専門家にご確認ください。
よろしければ「うちの名義、どうなってたっけ」を、秋のお彼岸のお茶うけの話題にしてみてください。
当事務所では相続登記や名義の確認のご相談を承っております。何から手をつけたらよいか分からない、という段階でも構いません。
司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員司法書士 市川貴史











































