相続した不動産を売るときの相続登記|売却前の手続きと決済の流れ

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2026年11月02日

相続した不動産を売るときの相続登記|売却前の手続きと決済の流れ

相続した不動産を売るときの相続登記|売却前の手続きと決済の流れ


秋のお彼岸が過ぎたころから、ご実家を相続された方にこうお尋ねいただきます。「この家を売りたいのですが、名義のままで売れますか」。登記の名義がお亡くなりになった方のままでは、買主へ名義を移す手続きは進みません。売るまでに何をどの順番で済ませるのか、順に見ていきます。


売却の前に相続登記が必要です


相続した不動産を売るためには、売買に先立って相続登記を済ませておく必要があります。登記の名義がお亡くなりになった方のままでは、売主として買主へ名義を移す登記ができないためです。


登記の申請は、不動産の所在地を管轄する登記所へ行います。法務局「登記申請手続のご案内」(相続登記①/遺産分割協議編・令和8年4月)には、「登記の申請は、その申請する不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に対してする必要があります。」とあります。相続登記も、そのあとの売買の移転登記も、同じ登記所へ申請します。


名古屋市東区のご相談で、買主がお決まりになってから相続登記のご依頼をいただいたことがあります。お父さまが昭和の終わりに買われたご自宅で、お母さまもすでにお亡くなりになっており、ご相続は二代ぶんにわたっていました。戸籍の証明書の取り寄せに三週間ほどかかり、決済の日取りを一度ずらしていただきました。売ると決めた時点でご相談いただければ、日取りを動かさずに済んだ場面でした。※事例は個人情報保護のため一部を改めています










順番すること
1相続人を確かめ、戸籍の証明書を集める
2遺産分割協議で、誰の名義にするかを決める
3相続登記を申請し、登記識別情報を受け取る
4不動産会社に売却をお願いし、買主を探す
5売買契約を結び、決済の日取りを決める
6決済の日に代金を受け取り、移転登記を申請する

表1 法務局「登記申請手続のご案内」(相続登記①/遺産分割協議編)の説明をもとに作成しました(2026年11月2日確認)。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


相続登記はいつまでにするか


相続登記の申請は、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に行うことが義務づけられています。売るつもりがあるかどうかにかかわらず、この義務は不動産を相続した方に生じます。


根拠は、令和6年4月1日に施行された不動産登記法の改正です。法務省「相続登記の申請義務化について」には、「その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました」とあり、「正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象となる」とされています(2026年11月2日確認)。


施行日より前に相続が始まっていた場合も対象になります。同じページには、「施行日より前に開始した相続によって不動産を取得した場合であっても、相続登記をしていない場合には、相続登記の申請義務化の対象となり、令和9年3月31日まで」に登記する必要があるとされています。ご実家の名義が祖父母の代で止まっている場合は、期限が2027年3月31日に区切られています。


誰の名義にして売るか


売るための相続登記では、相続人全員の共有名義にする方法と、相続人のうちお一人の名義にする方法があります。どちらにするかは、遺産分割協議で相続人がお決めになる事柄です。


法務局の同じ案内は、「比較的単純な相続のケースについて」、「遺産分割協議によって相続財産中の不動産を相続した場合の相続登記の申請手続について説明しています。」と断り、「複数の相続人のうちの一人が申請人となって登記申請をすることもできます」としています。


共有名義にすると、売買契約にも決済にも相続人全員が関わります。遠方にお住まいのご兄弟がいらっしゃると、日取りを合わせるだけでも手間がかかります。お一人の名義にまとめれば手続きはその方だけで進みますが、受け取った代金の分け方を遺産分割協議書に書いておきます。


遺産分割協議書には実印を押します。同じ案内には、「遺産分割協議書には、相続人全員が印鑑証明書と同じ印(実印)を押し、その印鑑証明書を各1通添付します」とあります。印鑑証明書は、相続登記の申請人になる相続人のぶんを除きます。


名古屋市内でも管轄が分かれます


名古屋市内の不動産であっても、登記を申請する先は区によって分かれています。中区・東区・北区・西区・千種区の不動産は名古屋法務局の本局、熱田区は熱田出張所、守山区・名東区は名東出張所の管轄です。


法務局の名古屋法務局の管轄区域の一覧で確かめました。本局は名古屋市中区三の丸の名古屋合同庁舎にあります。相続登記をする不動産が複数の区にまたがると、申請先も分かれます。東区のご自宅と熱田区の貸地をお持ちであれば、本局と熱田出張所の2か所の登記所へ申請します。


登録免許税の計算には、固定資産課税台帳の価格が要ります。名古屋市「市税に関する証明の種類と手数料・必要書類・発行窓口について」によると、評価証明と呼ばれる固定資産税評価額等証明書の手数料は令和8年10月から1件400円で、土地は1筆・1年度につき、家屋は1個・1年度につき1件と数えます。窓口は市税事務所と、区役所・支所の税務窓口です。


売買の登記は売主と買主で申請します


売買による所有権移転登記は、買主を権利者、売主を義務者として、双方が申請人になります。相続した方だけで申請できる相続登記とは、この点が違います。


法務局の所有権移転登記申請書(売買)の記載例(令和8年10月5日以降の申請・令和8年9月11日更新)には、「この記載例は、土地又は建物を売買により取得した場合のものです。」とあり、添付情報として、登記識別情報(又は登記済証)、登記原因証明情報、代理権限証明情報、印鑑証明書、住所証明情報、国籍等を証する情報が挙げられています(2026年11月2日確認)。


売主が用意するもののうち、気をつけたいのが登記識別情報です。相続登記が終わると、新しい名義人に登記識別情報が通知されます。売買の決済まで数か月あくことも多く、この通知書を見失ったというご相談は少なくありません。同じ記載例では、売主の印鑑証明書は「3か月以内に作成されたものを添付します。」とされています。


令和8年10月5日から、申し出る内容に国籍等が加わりました。法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」には、「令和7年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記の申請の際には、所有者の検索用情報を併せて申し出る(申請書に記載する)ことが必要になっています」とあり、さらに「令和8年10月5日以降に検索用情報の申出をする場合は、国籍等の情報についても申し出る必要があるとされました。」と書かれています(2026年11月2日確認)。氏名の振り仮名・生年月日・メールアドレスとあわせ、決済の前に確かめておきます。


司法書士がお手伝いできること


司法書士がお手伝いするのは、相続登記と、決済の日の所有権移転登記と、それらに要る書類の作成です。不動産の売買の媒介や代理は、司法書士の業務ではありません。


当事務所でも、売買の媒介や代理はお引き受けしていません。買主をお探しになる段で、ご希望があれば不動産会社をご紹介します。ご紹介にあたって紹介料はいただきませんし、特定の会社をお勧めすることもしていません。


決済の日は、代金の支払いと名義の移転が同じ場で行われます。司法書士は、売主と買主の本人確認と書類の確認を行い、代金の決済が済んだことを確かめてから登記の申請に移ります。書類に不足があれば決済が止まりますので、前日までにそろえておきます。


登録免許税と税金のこと


登録免許税は、相続による所有権の移転が1000分の4、売買による所有権の移転が土地で1000分の15、土地以外の不動産で1000分の20です。売るまでに相続登記と売買の登記を行いますので、二度かかります。


税率は法務局「登録免許税の計算」に示されています。相続については「相続又は法人の合併による移転及び共有物(その共有物について有していた持分に応じた価額に対応する部分に限る。)の分割による移転は 1000 分の 4、」とあり、土地の売買の1000分の15は「平成31年4月1日から令和11年3月31日まで」の税率、土地以外については「土地以外の不動産の売買 1000 分の 20」とされています(2026年11月2日確認)。


課税の対象になる価額は、固定資産課税台帳の価格です。同じ資料には「市町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合は、その価格です。」とあり、1,000円未満の端数を切り捨てて課税価格とし、税額に100円未満の端数があれば切り捨てます。










項目内容
相続の登記の税率1000分の4
土地の売買の登記の税率1000分の15
土地以外の売買の登記の税率1000分の20
課税価格固定資産課税台帳の価格から1,000円未満を切り捨てる
税額の端数100円未満を切り捨てる
評価証明の手数料名古屋市は令和8年10月から1件400円

表2 法務局「登録免許税の計算」と名古屋市の市税の証明の案内をもとに作成しました(2026年11月2日確認)。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


売ったときの税金は、登録免許税とは別の話になります。相続した財産を一定の期間内に売った場合には、相続税額のうち一定の金額を取得費に加えられる仕組みがあり、国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」には、「その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。」という要件が挙げられています。


被相続人がお住まいだった家屋を売った場合の特別控除もあります。国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」には、「昭和56年5月31日以前に建築されたこと。」「売却代金が1億円以下であること。」といった要件が挙げられており、適用は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡です。税額の計算や個別の課税関係については、税理士か税務署にご確認ください。


よくあるご質問


相続した不動産の売却について、ご相談の場でよくお尋ねいただく点をまとめました。いずれも一般的な取扱いで、ご事情によって結論が変わる場合があります。


相続登記をしないまま売ることはできますか


買主へ名義を移す登記は、売主が登記の名義人であることを前提としていますので、相続登記をしないまま売買を終えることはできません。売買契約を先に結ぶことはありますが、決済までに相続登記を終えておきます。相続登記の申請は所有権を取得したことを知った日から3年以内という義務でもありますので、売却のご予定にかかわらずお進めください。


相続人全員の名義にしないと売れませんか


相続人全員の共有名義にする方法と、相続人のうちお一人の名義にする方法のどちらでも売れます。遺産分割協議でお決めいただく事柄です。お一人の名義にまとめると売買の手続きは軽くなりますが、受け取った代金の分け方を遺産分割協議書に書いておきます。


売った代金に税金はかかりますか


売った代金から取得費と譲渡の費用を差し引いた額に、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。相続した財産を一定の期間内に売った場合の取得費の特例など、負担を軽くする仕組みもあります。税額の計算や個別の課税関係については、税理士か税務署にご確認ください。


ご状況ごとの進め方


相続した不動産を売るまでの道筋は、ご実家の名義が誰のままになっているか、相続人が何人いらっしゃるかで変わります。ご状況に近い行からお読みください。











ご状況考えられる進め方
売ることを決めているはじめに相続登記を済ませます
買主が決まっている決済の日取りに間に合うか確かめます
名義が祖父母の代で止まっている二代ぶんの相続登記になります
相続人が遠方にお住まいですお一人の名義にまとめる方法もあります
不動産が複数の区にあります申請先の登記所が分かれます
不動産会社をお探しですご希望があればご紹介します
代金の分け方で主張が分かれそうです弁護士へのご相談が適している場合があります

表3 本文で触れた進め方をまとめたものです。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


代金の分け方について相続人のあいだで主張が分かれそうなご事情であれば、登記を急ぐ前に弁護士へご相談いただくほうが早いこともあります。年内のご売却をお考えでしたら、年末年始にご家族がお集まりになる前に、相続登記の下ごしらえを進めておくと落ち着いて運びます。名古屋の相続登記と相続のご相談を、お気軽にお寄せください。


出典:法務省「相続登記の申請義務化について」、法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」、法務局「登記申請手続のご案内」(相続登記①/遺産分割協議編)、法務局「所有権移転登記申請書(売買)の記載例」、法務局「登録免許税の計算」、法務局「名古屋法務局の管轄区域」、国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、名古屋市「市税に関する証明の種類と手数料・必要書類・発行窓口について」


この記事は 2026年11月2日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは法務局・税務署・市区町村の窓口等でご確認ください。


本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。


監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)
司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。
相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。
最終更新日:2026年11月2日


相続した不動産の売却と相続登記について、まずはお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人
司法書士 市川 貴史(司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員)
愛知県司法書士会所属(登録番号 愛知第1239号)。司法書士として二十年以上、名古屋市東区を拠点に相続登記・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記の実務にあたっています。本コラムは、実際のご相談・手続きの経験と、記事中に示した法令・公的機関の情報をもとに執筆しています。制度は改正されることがありますので、最新の情報は法務局・裁判所等の公式案内または当事務所へご確認ください。
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