遺言書に財産をどう書くか|特定できない書き方と直し方

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2026年10月16日

遺言書に財産をどう書くか|特定できない書き方と直し方

名古屋のやさしい相続相談室|司法書士法人白壁事務所(しらかべ)


お彼岸が過ぎたころから、遺言書のご相談が増えます。年末年始にご家族が集まる前に下書きまで進めておきたい、というお話をよくいただきます。


ところが書き始めると手が止まるのが、財産をどう書くかというところです。「自宅は長男に」と心の中では決まっていても、紙の上でどう言い表すのかは、決まりを見ないと分かりません。方式を守って書き上げても、どの財産を指すのか読み取れない部分は、登記や解約の手続きにそのまま使えません。不動産、預貯金、書き漏れへの備え、渡し方の言葉という順にご案内します。


財産の書き方で決まること


遺言書に書いた財産が特定できるかどうかで、相続が始まったあとの手続きにそのまま使えるかが決まります。方式が整っていても、どの財産を指すのか読み取れない部分は、ご家族が別に話し合うことになります。


松江地方法務局の「自筆証書遺言書 作成・保管申請キット」は、「内容について、法律的に不備がないよう、具体的・正確に記載する。」と書き、あいまいなままでは「遺言の内容があいまい・不正確な場合は、相続人間で争いになるおそれがある。」と述べています。遺言書を書く目的が、残されたご家族の手間と迷いを減らすことにあるとすれば、ここは外せません。


どこまで書けばよいのかは、財産の種類ごとに違います。おおよその目安を先にまとめておきます。










財産書いておく事項
土地所在、地番、地目、地積
建物所在、家屋番号、種類、構造、床面積
預貯金金融機関名、店番、口座番号
受け取る人続柄、氏名、生年月日
渡し方相続させる、遺贈する
書き漏れ残りの財産を誰に渡すか

表1 法務局の記載例と文例集をもとに作成(2026年10月14日確認)。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


この順に見ていきます。いちばん取り違えが起きやすいのが、土地と建物です。


不動産は登記のとおりに書く


土地と建物は、登記されている内容のとおりに書きます。土地は所在と地番、地目、地積、建物は所在と家屋番号、種類、構造、床面積です。住所をそのまま書くと、記録と合わないことがあります。


松江地方法務局の記載例も、土地について所在、地番、地目、地積を並べ、建物について家屋番号、種類、構造、床面積を並べる形で作られています。住居表示の住所と、登記に記録された所在や地番は、別のものです。郵便が届く住所で書いてあっても、登記の記録とつながらないことがあります。


この違いが効いてくるのは、相続が始まったあとです。静岡地方法務局の相続登記の申請書の記載例には、「登記の申請をする不動産を,登記記録(登記事項証明書)に記録されているとおりに正確に記載してください。」とあり、「持分は,遺言書に記載されている持分と一致している必要があります。」とも書かれています。登記の記録と遺言書の両方に合う申請書でなければ、手続きが進みません。


ご自宅の登記の内容は、登記事項証明書で確かめられます。手元の権利証でも分かりますが、その後に分筆や合筆をしていると現在の記録と違います。4月に届く固定資産税の通知も手がかりになります。


名古屋市東区のご相談で、お父様の遺言書に「自宅の土地建物は長男に」とだけ書かれていた例がありました。ご本人の中では一枚の敷地でしたが、登記を取ると土地が2筆に分かれていました。昔、庭の一部を買い足したときのままだったようです。どちらの土地を指すのかが決まらず、その不動産については相続人の皆様であらためて話し合っていただくことになり、戸籍を集めるところからやり直しになりました。書き足すだけなら、元気なうちに10分で済んだところです。※事例は個人情報保護のため一部を改めています


預貯金は口座が分かるように書く


預貯金は、どの口座を指すのかが読み取れるように書きます。金融機関名と、支店または店番、口座番号を添えておけば、窓口でそのまま照らし合わせてもらえます。


函館地方法務局の「自筆証書遺言書の文例集(付言事項付き)」には、「遺言者名義の○○銀行○○支店の定期預金(口座番号○○○○)を長男一雄に相続させる。」という文例が載っています。金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号がひととおり入った形です。


同じ文例集には、「遺言者名義の預貯金」とだけ書いて、ひとまとめに渡す形の文例も載っています。口座が多いご家庭では、こちらのほうが書き漏れが出にくくなります。どちらが向くかは、口座の数と、分け方をどこまで細かく決めたいかで変わります。


残高は書き込まなくてかまいません。亡くなるまでに変わりますので、書いた額と食い違うと、かえって読み取りにくくなります。


書き漏れた財産に備える一文


遺言書に挙げた財産のほかに財産が残っていたとき、その分を誰に渡すかを一文で決めておけます。書き漏れや、あとで増えた財産を受け止める受け皿になります。


函館地方法務局の文例集には、「前記1、2に記載した財産以外に、遺言者の有する財産があった場合、そのすべてを妻花子に相続させる。」という文例が載っています。挙げた財産を番号で指したうえで、それ以外をまとめて渡す形です。


この一文があるかないかで、残されたご家族の手間が変わります。書いていなければ、挙げ漏れた財産についてだけ、あらためて相続人全員で話し合うことになります。口座がひとつ出てきただけでも、戸籍を集め直し、全員の署名と押印をそろえる流れに戻ります。


「相続させる」と「遺贈する」


財産を渡す相手が相続人かどうかで、使う言葉が変わります。配偶者や子のように相続人になる方へは「相続させる」、そうでない方へは「遺贈する」と書きます。


松江地方法務局のキットは、財産を譲り受ける相続人以外の方を受遺者と呼ぶと説明しています。札幌法務局の遺言書の記載例でも、「遺贈する」とした場合は保管の申請書に受遺者として記載する扱いになっています。言葉の選び方が、そのあとの書類の書き方にもつながります。


受け取る方の特定も、財産と同じ考え方です。函館地方法務局の文例集は「遺言者が有するすべての財産を、遺言者の妻函館花子(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。」という形で、続柄、氏名、生年月日を並べています。相続人でない方へ渡すときは、お住まいの場所も添えると、より確かになります。


遺言の内容を実現する役を決めておくこともできます。松江地方法務局の記載例は「私は、この遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。」としたうえで、住所や氏名を書く形です。函館地方法務局の文例集では「遺言者は、妻花子を遺言執行者に指定する。」という一文で指定しています。


財産目録は手書きでなくてよい


財産の一覧は、本文と別の紙に作れば手書きでなくてかまいません。2019年(平成31年)1月13日に施行された方式の緩和で、添える財産目録は自書が要らなくなりました。


法務省の「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」は、財産目録について「書式は自由で,遺言者本人がパソコン等で作成してもよいですし,遺言者以外の人が作成することもできます。」と書き、「預貯金について通帳の写しを添付することもできます。」としています。登記事項証明書をそのまま添えれば、所在や地番を写し間違える心配がありません。


条件は二つあります。ひとつは署名と押印で、「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては,その両面)」に署名押印をするものとされています。もうひとつは紙の分け方で、「本文と同一の用紙に自書によらない記載をすることはできませんので注意してください。」と念を押されています。


札幌法務局の記載例は、通帳やカードのコピーを使う場合に、金融機関名、支店名、口座名義、口座番号が読み取れる状態を求めています。本文の側では「別紙1」「別紙2」と書いて、どの紙を指すのかを示します。訂正の方法も本文と同じで、法務省は「遺言者が,変更の場所を指示して,これを変更した旨を付記してこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ」効力を生じないと説明しています。


書いたあとは登記まで進める


遺言書で不動産を受け取ることになっていても、法定相続分を超える部分は登記をしておかないと、ほかの方に主張できません。2018年(平成30年)の相続法の改正で、この扱いが変わりました。


法務省の「相続の効力等の見直し」は、見直しのねらいを「相続させる旨の遺言等により承継された財産については,登記なくして第三者に対抗することができるとされていた現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととする。」と述べています。改正前は、遺言があれば登記がなくても主張できるという取り扱いでした。


ねらいは、遺言の中身を知る手立てのない方を守ることにあります。同じ資料は「遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や第三者の取引の安全を確保」すると書いています。この見直しを含む相続法の改正は、原則として2019年(令和元年)7月1日に施行されました。


遺言書は出発点であって、終点ではありません。名古屋の相続登記のご相談でも、遺言書はあるのに登記だけが残っている、という形がよくあります。


よくあるご質問


財産の書き方について、ご相談でよくいただくお尋ねをまとめます。書き方を決める前に知っておくと、迷いが減るところです。


「自宅」とだけ書いた遺言書は使えませんか


ご自宅の土地と建物が1つずつで、ほかに不動産がなければ、読み取れる場合もあります。ただ、土地が2筆に分かれていたり、同じ敷地に物置が別の建物として登記されていたりすると、どこまでを指すのかが決まりません。登記事項証明書を取って、筆の数と家屋番号を確かめたうえで書き直すほうが確かです。


銀行の名前が変わっていたらどうなりますか


書いたあとに合併や店舗の統合があっても、それだけで無効になるわけではありません。金融機関名が変わっても、店番や口座番号からたどれることが多いためです。それでも気になるときは、同じ内容を書き直して日付を新しくするか、「遺言者名義の預貯金」のようにひとまとめの書き方へ改めるという進め方があります。


財産目録はパソコンで作ってよいのですか


本文と別の紙であれば作れます。ご家族に作ってもらった一覧でもかまいません。ただし全てのページに氏名を自書して押印し、本文と同じ紙には書かないという条件が付きます。この二つを外すと、目録の部分が効かなくなります。


ご状況ごとの進め方


財産の書き方は、ご家庭の事情によって落ち着きどころが変わります。ここまでの進め方を、ご状況ごとに並べておきます。











ご状況考えられる進め方
ご自宅をどう書くか迷っている登記事項証明書を取り、所在と地番から写します
土地が2筆に分かれている筆ごとに地番を挙げて書きます
口座がいくつもあるひとまとめの書き方も選べます
書き漏れが心配残りの財産を誰に渡すかの一文を添えます
相続人でない方に渡したい「遺贈する」と書き、お住まいの場所も添えます
手書きの量を減らしたい財産目録をパソコンで作る形が向きます
相続人のあいだで争いになりそう弁護士へのご相談が適している場合があります

表2 本文で触れた進め方をまとめたものです。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


このなかで、いちばん手戻りが少ないのは登記事項証明書を先に取ることです。所在と地番が手元にあれば、不動産の書き方はそこで決まります。相続人のあいだで折り合いがつかない見込みのときは、書く前に弁護士へご相談いただくほうが早いこともあります。


財産の書き方は、ご自宅の登記事項証明書を1通取るところから決まります。所在と地番、家屋番号を写し、口座には金融機関名と店番、口座番号を添えます。受け取る方は続柄と氏名、生年月日で示し、最後に残りの財産を誰に渡すかの一文を置いておけば、書き方で手続きが止まることはほとんどありません。名古屋の遺言書作成と相続のご相談を、お気軽にお寄せください。


出典:法務省「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」、法務省「相続の効力等の見直し」、松江地方法務局「自筆証書遺言書 作成・保管申請キット」、函館地方法務局「自筆証書遺言書の文例集(付言事項付き)」、札幌法務局(遺言書の記載例②)、静岡地方法務局(相続登記の申請書の記載例)


この記事は 2026年10月14日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは法務局等でご確認ください。


本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。


監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)
司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。
最終更新日:2026年10月14日


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