遺言書の書き方と3つの方式|保管方法と2026年の法改正まで

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2026年10月07日

遺言書の書き方と3つの方式|保管方法と2026年の法改正まで

名古屋のやさしい相続相談室|司法書士法人白壁事務所(しらかべ)

遺言書を残しておきたいとお考えでしたら、はじめに決めていただきたいのは「どの方式で書くか」と「どこに保管するか」の2つです。この2つが決まれば、あとは中身を考える作業に移れます。


名古屋市東区白壁の当事務所でも、秋のお彼岸が過ぎたころから遺言のご相談が増えてまいります。遺言の方式の違いから、自筆で書くときの決まり、法務局に預ける制度、公証役場で作る公正証書遺言、2026年6月に公布された法改正までを、順にご案内します。



遺言書がないと何が起きるか


遺言書がない場合、遺産の分け方は相続人全員の話し合いで決めることになります。合意が得られなければ家庭裁判所の調停や審判に進むことになり、そのあいだ不動産の名義も預貯金も動かせない期間が続きます。


遺言書がない相続では、まず戸籍で相続人を確定させ、全員で遺産の分け方を話し合います。法律は取り分の目安を定めているだけで、どの財産を誰が受け取るかまでは決めていません。不動産のように分けにくい財産があると、話がまとまるまでに時間がかかることはめずらしくありません。


遺言書があれば、この部分を先に決めておけます。自宅は同居していた長男に、預貯金は離れて暮らす長女に、という指定ができますので、ご家族は話し合いの負担を負わずに手続きへ進めます。長年お世話をしてくれた子の配偶者のように、相続人でない方に渡したい場合は、遺言書がなければ実現できません。


ただし、遺言書で決められる範囲にも限りがあります。配偶者や子などには遺留分(法律で最低限保障された取り分)があり、これを侵害する内容であれば、侵害された方の権利行使によって「遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずる」こととされています(法務省)。


遺言の方式は3つあります


民法が定める普通の方式の遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つです。このうち実際に使われているのは前の2つで、当事務所でお手伝いする遺言も、そのどちらかに収まります。


秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま公証人に遺言書の存在を証明してもらう方式ですが、手間に対して得られるものが少なく、ほとんど使われていません。法務省の案内も、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つを並べて説明する形になっています(法務省)。


この2つは、費用のかかり方と、残されたご家族の手間の少なさが、ちょうど逆の関係にあります。自筆であればその日のうちに書けますが、方式を外していれば効力が生じませんし、見つからなければ意味がありません。











項目自筆証書遺言公正証書遺言
作り方本文と日付と氏名を自書公証人が作成
証人不要2人以上の立会い
作成の費用用紙と筆記具だけ財産の価額に応じた手数料
保管する場所自宅または法務局公証役場
本人の出頭法務局に預けるときは出頭公証役場に出頭(原則)
方式の確認法務局に預ければ外形的な確認公証人が方式に従い作成
家庭裁判所の検認要(法務局に預ければ不要)不要

表1 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い(法務省・法務局・裁判所の各資料、2026年10月7日確認)。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


気をつけていただきたいのは検認の行です。自筆の遺言書をご自宅で保管していた場合、相続が始まったあとに家庭裁判所で検認を経ることになります。


自筆で書くときの決まり


自筆証書遺言は、本文の全文と日付と氏名を遺言者が自分で書き、押印して作ります。添付する財産目録だけは2019年(平成31年)1月13日から自書でなくてもよくなりましたが、目録の各ページに署名押印が要ります。


日付は年月日まで入れ、氏名は戸籍のとおりに書いて押印します。財産目録は「書式は自由で、遺言者本人がパソコン等で作成してもよいですし、遺言者以外の人が作成することもできます」とされ、登記事項証明書や通帳の写しを添える方法も認められています(法務省)。


目録は「毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名押印をしなければならない」とされていますので、片面だけの目録なら1か所、両面に記載があれば両面それぞれに署名押印します。ホチキス留めや契印は「必要ではありませんが、遺言書の一体性を明らかにする観点からは望ましいものである」とも示されています(いずれも法務省)。


以前お受けしたご相談で、ご自宅の金庫から出てきた自筆の遺言書に「自宅は長男に相続させる」とだけ書かれていたことがありました。ご家族のなかでは自宅がどれを指すかは明らかでしたが、登記簿には土地と建物が別に記録されており、隣の小さな土地も同じ敷地として使われていました。この土地が「自宅」に含まれるかで判断が分かれますので、確認にお時間をいただきました。財産の書き方は、ご家族に伝わるかどうかではなく、登記簿や通帳の記載と突き合わせられるかどうかで決めていただくほうが安全です。※事例は個人情報保護のため一部を改めています


筆記具は、消えるインクを避けて、ボールペンや万年筆のような消えにくいものを使います(法務省)。鉛筆で書いた遺言書は、あとから書き換えられるおそれが残ります。


法務局に預ける保管制度


自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局に預けておく仕組みです。手数料は1件につき3,900円で、保管している年数にかかわらず申請のときだけの負担です。預けた遺言書は、家庭裁判所の検認が要りません。


申請できる場所は決まっています。「①遺言者の住所地」「②遺言者の本籍地」「③遺言者が所有する不動産の所在地」のいずれかを管轄する遺言書保管所で、どこを選んでもかまいません(法務省)。愛知県内の遺言書保管所は、名古屋法務局の本局と、春日井・津島・一宮・半田・岡崎・刈谷・豊田・西尾・豊橋・新城の各支局を合わせた11か所です。東区からは、地下鉄名城線の名古屋城駅が最寄りの本局が通いやすい場所です。


預ける遺言書には様式の決まりがあります。用紙はA4サイズで、「上側5ミリメートル以上、下側10ミリメートル以上、左側20ミリメートル以上、右側5ミリメートル以上の余白」を空け、片面のみに記載して裏面には何も書きません。複数ページになる場合は各ページにページ番号を書き、とじ合わせずに持参します(いずれも法務省)。余白が足りないという理由で預かってもらえないことがありますので、清書の前に様式を確かめておくと二度手間になりません。


申請のときは本人が窓口に出頭します。法務局の職員が「民法の定める自筆証書遺言の方式について外形的な確認」を行いますので、日付や署名押印の抜けは、この段階で気づけます(法務省)。


預けておくと、相続が始まったあとに2つの通知が働きます。1つは指定者通知で、申請のときに希望しておくと、法務局が遺言者の死亡の事実を確認できたときに、指定した方(3名まで)へ遺言書が保管されている旨が通知されます。もう1つは関係遺言書保管通知で、相続人等のうちどなたか1人が遺言書情報証明書の交付を受けたり閲覧をしたときに、その他の相続人等全員へ通知が届きます(いずれも法務省)。


手数料は収入印紙で納めます。保管の申請が1件につき3,900円、遺言書情報証明書の交付が1通につき1,400円、遺言書保管事実証明書が1通につき800円、閲覧はモニターで1回1,400円、原本で1回1,700円です(法務省)。


公正証書遺言という選び方


公正証書遺言は、公証人が方式に従って作成し、原本を公証役場で保管する遺言です。証人2人以上の立会いが要り、財産の価額に応じた手数料がかかりますが、家庭裁判所の検認は要りません。


公証人は法務大臣が任免し、法務局または地方法務局に所属しています。全国に約500名、公証役場は約300か所あります。遺言公正証書については、「公平かつ中立な第三者である公証人が法定の方式に従って作成」するため、家庭裁判所の検認の手続も不要であるとされています(法務省「公証制度について」)。


名古屋市内の公証役場は3か所で、そのうち葵町公証役場は東区代官町にあります(名古屋法務局「公証役場一覧」)。春日井市の公証役場は鳥居松町4-52で、名古屋法務局春日井支局も同じ鳥居松町にあります。尾張北部にお住まいの方は、登記の相談と遺言の作成を同じ町内で済ませられる位置関係です。


作成の日は、原則として公証役場に出頭し、証人2人以上の立会いのもとで進みます。手数料は財産の価額に応じて決まりますので、何をどなたに渡すかが固まってから見積もりを取る流れになります。


2025年(令和7年)10月1日から、公正証書の作成手続がデジタル化されました。「嘱託人が希望し、かつ、公証人が相当と認めるときは、ウェブ会議の利用が可能に」なり、公正証書は「原則として電子データで作成・保存」されることとされています(法務省)。遠方のご家族が証人を引き受ける場合など、日程を合わせやすくなる場面が出てきます。実際の運用は役場ごとに違いますので、事前にお尋ねください。


遺言書で決めておけること


遺言書では、どの財産を誰に渡すかを指定できます。あわせて遺言執行者を決めておくと、名義の変更や預貯金の解約を遺言執行者が進められます。相続人でない方へ財産を渡す遺贈も、遺言書で行います。


財産の書き方は、不動産であれば登記事項証明書に記録された所在・地番・家屋番号を写し、預貯金であれば金融機関名、支店名、口座の種類と番号まで書きます。名義を変える窓口はその書面だけを見て判断しますので、特定できる形で書いておくほうが手続きが早く終わります。


遺言執行者を決めておくかどうかで、相続が始まったあとの進み方が変わります。2019年(令和元年)7月1日に施行された改正で、「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずる」ことが明文化されました(法務省)。


お墓や仏壇を誰が継ぐかについても、遺言書のなかで触れておきたいというご相談が多くあります。相続人でない方への遺贈、生命保険の受取人との釣り合いなど、書き込める内容には幅があります。


2026年の改正で変わること


2026年(令和8年)6月24日に、遺言の押印を任意とし、新たに保管証書遺言を設ける法律が公布されました。押印に関する部分は公布から1年以内、保管証書遺言は3年以内に、政令で定める日から施行されます。


法律の名前は「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)です。遺言に関する部分は2つに分かれていて、1つは押印の扱い、もう1つは新しい方式の創設です。


押印については、「自筆証書遺言、秘密証書遺言、特別の方式の遺言における遺言者及び証人等の押印要件を廃止し、押印を任意とする」とされました(法務省「民法等改正法の概要」)。


もう1つの保管証書遺言は、「パソコン等を用いて作成した遺言のデータやプリントアウトしたものを法務局に提供し、本人が対面で、又はウェブ会議を利用して遺言の全文を口述するなどして、法務局が遺言を保管する方式」として創設されました(同)。手書きがつらい方にとって、選べる道が増えます。


施行の時期は、「遺言制度:公布から1年(システム改修を要するものは3年)を超えない範囲で政令で定める日」とされています(同)。公布が2026年6月24日ですので、押印の扱いは2027年6月までのどこかで、保管証書遺言は2029年6月までのどこかで切り替わる見込みです。


いま遺言書を書かれる場合は、現在のルールに従います。押印は今のところ要件ですので、署名のあとに押印までしておいてください。


よくあるご質問


遺言のご相談でくり返しお尋ねいただく点を、4つ挙げます。いずれも方式と保管にかかわる質問で、先に答えが分かっていると、書き始めるまでの時間が短くなります。


遺言書が封をされていました。開けてよいですか。


開封せずにお持ちください。自筆の遺言書は、保管者または発見した相続人が、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求することになっています(裁判所「遺言書の検認」)。申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。


親が遺言書を残したか調べられますか。


法務局に預けられているかどうかは、遺言書保管事実証明書を請求すれば分かります。手数料は1通につき800円です。公正証書で作られていた場合は、正本や謄本がご自宅に残っていることが多く、見あたらないときは公証役場にお尋ねいただく方法があります。


法務局に預ければ、内容も見てもらえますか。


法務局の職員が行うのは「民法の定める自筆証書遺言の方式について外形的な確認」です(法務省)。日付や署名押印の抜けは気づいてもらえますが、書いた内容が狙いどおりの結果を生むかどうかは確認の対象ではありません。中身の検討は、書く前の段階でご相談ください。


公正証書と法務局の保管制度、どちらがよいですか。


費用を抑えてまず形にしておきたいという場合は、自筆で書いて法務局に預ける方法が向きます。相続人の範囲が広い、不動産が複数あるといった事情があれば、公証人が作成する公正証書遺言をご検討ください。どちらも家庭裁判所の検認は要りません。


どの方式を選ぶか


どの方式が向いているかは、財産の種類と相続人の顔ぶれで決まります。費用を抑えて形にしておきたいなら自筆証書遺言と法務局の保管制度、相続人が兄弟姉妹に及ぶなど関係が複雑であれば公正証書遺言、という分かれ方が多くなります。












ご状況考えられる進め方
費用を抑えて形にしたい自筆で書き、法務局に預けます
手書きがつらい公正証書遺言をご検討ください
不動産が複数ある公正証書遺言が向きます
相続人が兄弟姉妹になる公正証書で形を整えておきます
相続人でない方に渡したい遺贈として遺言書に書きます
遺言書があるか分からない遺言書保管事実証明書を請求します
封をした遺言書が出てきた開封せず家庭裁判所に検認を申し立てます
すでに遺言書を作ってある財産の変化に合わせて見直します

表2 ご状況ごとの進め方の目安(2026年10月7日確認)。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります


当事務所がお手伝いできるのは、遺言書の文案づくり、法務局の保管制度を使う場合の様式の確認、公正証書遺言を作る場合の公証役場との打ち合わせです。家庭裁判所の検認については、提出する書類の作成という立場でお手伝いしますが、手続きそのものを代理することはできません。相続人のあいだで争いになっている場合は、弁護士へのご相談が適しています。


書き始める前に、財産の一覧を1枚にまとめてみてください。不動産、預貯金、保険、株式を書き出すだけで、誰に何を渡すかの輪郭が見えてきます。作ったあとも、財産の変化に合わせて見直していただく部分です。年末年始にご家族が集まる前に下書きまで済ませておくと、そのときの話し合いが具体的になります。


名古屋の遺言書作成と相続のご相談を、お気軽にお寄せください。当事務所にご依頼いただく場合の費用は、ホームページの料金ページでご案内しています。


出典:法務省「自筆証書遺言の方式緩和について」/法務省「遺言書の様式等についての注意事項」/法務省「自筆証書遺言書保管制度」/法務省「自筆証書遺言書保管制度のご案内(令和7年度改訂版)」/法務省「公証制度について」/法務省「公正証書に係る一連の手続のデジタル化について」/法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」/法務省「民法等改正法の概要」/法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」/裁判所「遺言書の検認」/名古屋法務局「公証役場一覧」


この記事は 2026年10月7日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは法務局・家庭裁判所・公証役場等でご確認ください。


本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。


監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)
司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。
相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。
最終更新日:2026年10月7日

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