相続放棄とは|3か月の期限と、手続きで気をつけること

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2026年09月25日

相続放棄とは|3か月の期限と、手続きで気をつけること

名古屋のやさしい相続相談室|司法書士法人白壁事務所(しらかべ)

「借金の方が多いようです」「ずっと行き来のなかった親族の相続人になってしまいました」。そうしたときに考えられるのが相続放棄です。期限は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月。葬儀と役所の届出をひととおり済ませたころには、もう半分が過ぎていることが少なくありません。


名古屋市東区の当事務所にも、秋のお彼岸を過ぎたあたりから「督促状が届きました」というご相談が増えてきます。相続放棄の期限と手続きの流れ、そして気をつけていただきたいことを、家庭裁判所と法務省の資料に沿って整理します。



相続放棄とは、どのような手続きですか


相続放棄は、家庭裁判所に申述して、はじめから相続人でなかったものとして扱ってもらう手続きです。預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金や保証債務といったマイナスの財産も、いっさい受け継がないことになります。


裁判所の案内では、相続人は単純承認・相続放棄・限定承認の3つから選べるとされ、放棄をするには「家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません」と示されています(裁判所「相続の放棄の申述」)。家族のあいだで「私は要らない」と言い合っただけでは、放棄をしたことになりません。


放棄が受理されると、その方は「初めから相続人でなかったものとされます」(国税庁「相続人の範囲と法定相続分」)。預金だけ受け取って借金は引き継がない、といった選び方はできません。


借金の額がはっきりしないときには、限定承認という選び方もあります。「相続人全員が共同して行う必要があります」とされており、ひとりでも足並みがそろわなければ選べません(裁判所「相続の限定承認の申述」)。









項目相続放棄限定承認
申述する人1人でもできます相続人全員で共同します
期限3か月以内3か月以内
申述先最後の住所地の家庭裁判所最後の住所地の家庭裁判所
収入印紙800円(申述人1人につき)800円
手続き後の立場初めから相続人でなかったことに得た財産の限度で債務を負います

表1 相続放棄と限定承認の比較(裁判所「相続の放棄の申述」「相続の限定承認の申述」2026年9月25日確認)。期限はいずれも自己のために相続の開始があったことを知ったときから数えます。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります。


期限は3か月です。いつから数えるのでしょうか


申述は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならない」とされています(裁判所「相続の放棄の申述」)。亡くなった日から機械的に数えるのではなく、自分が相続人になったと知ったときから数える点が大切です。


この3か月を熟慮期間と呼びます。郵便物に督促が混ざっていないかを見て、通帳の入出金をさかのぼり、不動産の有無を確かめ、保証人になっていた形跡を探す。遠方にお住まいであれば、それだけで何度も往復することになります。


調べ終わらないまま期限が近づいたときは、家庭裁判所に熟慮期間を延ばしてもらう方法があります。「申立ては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にする必要があります」とされています(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。延ばしてもらう手続きそのものも3か月以内に済ませる必要がある、という点にご注意ください。


私が担当した案件でも、疎遠だったお父さまが亡くなり、2か月半が過ぎたころに金融機関からの封書でようやく借入れの存在を知った、というご相談がありました。ほかに保証債務がないかを確かめる時間が足りず、まず期間の伸長を申し立てて、その間に調査を進めました。慌てて判断せずに済んだぶん、ご家族が納得できる結論にたどり着けたと感じています。※事例は個人情報保護のため一部を改めています。


どこへ、何を出すのですか


申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。費用は申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手で、申述書のほかに、被相続人の住民票除票または戸籍附票と、申述人の戸籍謄本を提出します(裁判所「相続の放棄の申述」)。


申述人は相続人本人ですが、相続人が未成年者または成年被後見人である場合は、その法定代理人が代理して申述します。郵便切手の金額は裁判所ごとに異なりますので、提出先に確かめてから用意されると無駄がありません。※事案により異なります。


名古屋の方に知っておいていただきたいのが、名古屋家庭裁判所の即日審判手続です。条件を満たせば、申述したその日のうちに受理通知書等を受け取れます。条件は、受付時間内に手続を終えて交付時間に再度来られること、申述人が第1順位の相続人または配偶者であること、死亡日から3か月以内の申述であること、被相続人が外国人でないこと、の4点です(名古屋家庭裁判所「相続の放棄の申述」)。


ただし、3月21日から4月4日、7月21日から8月31日の午後、12月20日から12月28日は実施されないと案内されています。年度末やお盆を挟む時期にあたりますので、ご注意ください。あわせて「収入印紙(申立手数料)は裁判所では販売していません」とも書かれています。印鑑(認印)と身分証明書も持参することになります。


放棄をすると、次は誰が相続人になりますか


放棄をした方は初めから相続人でなかったものとされますので、同じ順位に他の相続人がいなければ、次の順位の方が相続人になります。お子さんが全員放棄すれば父母や祖父母へ、その方々もいなければ兄弟姉妹へと移っていきます。


国税庁「相続人の範囲と法定相続分」は、第3順位の兄弟姉妹について「第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります」としています。放棄によって先順位がいなくなれば、この順番で相続人の立場が移ります。


ここで問題になりやすいのが、次に相続人になった方への連絡です。放棄をしても、次順位の方に家庭裁判所から自動的にお知らせが届くわけではありません。ご本人が知らないまま3か月が過ぎることは避けたいところです。お子さん全員で放棄をされる場合は、ご兄弟やおじ・おばにあたる方へ早めに一報を入れておかれることをおすすめします。


逆に、自分より先順位の方が放棄したのかどうかが分からないときは、家庭裁判所への照会という方法があります(名古屋家庭裁判所「相続放棄・限定承認の申述の受理の有無の照会」)。詳しくは後のご質問でも触れます。


考えているあいだに、気をつけていただきたいこと


相続放棄を検討されているあいだは、亡くなった方の財産に手をつけないでおくのが安全です。預金を引き出して使う、家財や車を売る、といった行為は、相続を承認したものと受け取られるおそれがあります。


ご相談で多いのが、「入院費の精算を故人の口座から済ませてしまった」というお話です。誠実に後始末をしようとされた結果なのですが、放棄ができるかどうかの判断に影響しかねません。債権者から請求書が届いた場合も、その場で支払うのは避けて、まずは書面を保管しておいてください。いつ何が届いたかは、期限を数えるうえでも意味を持ちます。


放棄をしたあとにも残ることがあります


相続放棄をしたときに、その財産を現に占有していた場合は、相続人や相続財産の清算人に引き渡すまでのあいだ、その財産を保存する義務が残ります。令和5年(2023年)4月1日に施行された民法の改正で定められた取扱いです。


法務省の改正資料は、新民法940条1項について「相続の放棄の時に現に占有している相続財産につき、相続人(法定相続人全員が放棄した場合は、相続財産の清算人)に対して当該財産を引き渡すまでの間、その財産を保存しなければならない」と説明しています(法務省「民法等の一部改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」)。放棄をした瞬間に実家の鍵を放り出してよい、というわけではないのです。被相続人と同居していた方は、引き渡す相手が決まるまで気にかけていただくことになります。


相続人全員が放棄したときは、家庭裁判所が選任する清算人が財産の清算にあたります。同じ改正で「相続財産の管理人」という名称が「相続財産の清算人」に改められ、権利関係の確定に必要な期間も合計6か月へと短縮されました(法務省)。古い資料には管理人という呼び方が残っています。










ご状況考えられる進め方
借金の方が明らかに多い3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄を申述します
財産と借金のどちらが多いか分からない相続人全員での限定承認も選択肢になります
3か月では調査が終わりそうにない3か月以内に熟慮期間の伸長を申し立てます
先順位の人が放棄したか分からない家庭裁判所に申述の受理の有無を照会します
放棄した実家に住み続けている引き渡すまで保存する義務が残ります
相続人全員が放棄した相続財産の清算人が財産の清算にあたります

表2 ご状況ごとの進め方の目安(裁判所・法務省の各資料、2026年9月25日確認)。※一般的な例です。個別の事情により結論が異なります。


相続登記との関係はどうなりますか


相続登記の申請義務は、不動産を相続で取得した方が対象とされています。放棄をした方はその不動産を取得しないことになりますので、申請義務を負う立場にはなりません。放棄をしなかった相続人が登記を進めることになります。


法務省のQ&Aは「相続登記の義務は、不動産を相続で取得した方が対象ですので」と述べています(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。相続登記の義務化では、不動産を取得したことを知った日から3年以内という期限が定められています。放棄をされた方はこの義務から外れますが、放棄をしなかったご家族には期限が残ります。


登記の場面では、放棄をした方の書類の扱いも問題になります。東京ブロック管内法務局の相続登記ガイドブックは、相続放棄をした人の戸籍の謄抄本について「被相続人の除籍謄本、相続放棄申述受理証明書でその者が相続人であることが分かる場合は不要です」としています(問61)。この証明書を取得しておかれると、ご家族の後の手続きが軽くなります。


よくあるご質問


ご相談の場でよくいただくお尋ねのうち、期限と手続きに関わるものを4つ取り上げます。いずれもご事情によって結論が変わりますので、早めにご確認ください。


3か月を過ぎてしまいました。もう何もできないのでしょうか


熟慮期間を延ばしてもらう申立ては3か月以内にする必要がありますので、その方法はとれません。その後にどのような対応が可能かは、いつ何を知ったのか、財産に手をつけたかどうかといった事情によって変わります。ご自身で結論を出さず、状況を整理したうえでご相談ください。


借金があるかどうか分からないまま、期限が近づいています


調査が終わらないうちに3か月が来そうな場合は、熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。相続人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手で申し立てられます。相続人全員の足並みがそろうのであれば、限定承認を検討する道もあります。


ほかの相続人が放棄したかどうかを調べられますか


家庭裁判所への照会という方法があります。名古屋家庭裁判所では「相続放棄・限定承認の申述の受理の有無の照会」を受け付けており、照会手数料は不要とされています。相続人であることを確認できる戸籍などのコピーと返信用封筒を添えて申し込みます。


手続きは自分でもできますか


申述書の書式は裁判所のウェブサイトで公開されており、ご自身で申述される方もいらっしゃいます。司法書士は、家庭裁判所に提出する書類の作成という立場でお手伝いします(法務省「司法書士について」)。手続きそのものを代理することはできませんので、相続人のあいだで争いがあるときは弁護士へのご相談が適しています。


おわりに


相続放棄で大切なのは、3か月という期間を意識して早めに動き出すことと、判断がつくまで財産に手をつけないことの2点です。この2つを守っていただければ、選べる道は残ります。


年末年始やお盆に親族が集まったときに、はじめて借入れの話が出てくることがあります。そこから調査を始めると、3か月はすぐに足りなくなります。名古屋市東区の当事務所は、愛知・岐阜にお住まいの方からのご相談もお受けしています。どこから手をつければよいか分からないという段階で、まずはお気軽にご相談ください。


出典



この記事は 2026年9月25日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは家庭裁判所・法務局等でご確認ください。


免責


本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。


監修


監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)
司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。
相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。
最終更新日:2026年9月25日

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