数次相続とは|相続登記をしないうちに次の相続が起きたとき

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2026年09月18日

数次相続とは|相続登記をしないうちに次の相続が起きたとき

名古屋のやさしい相続相談室|司法書士法人白壁事務所(しらかべ)

お父さまの相続の手続きが終わらないうちに、今度はお母さまが亡くなられました。こうした重なり方を数次相続(すうじそうぞく)と呼びます。手続きが消えてなくなったわけではなく、引き継がれたまま残っています。ただし、話し合いに加わる方が増え、登記の組み立ても変わりますので、全体像を先につかんでおくと動きやすくなります。名古屋市東区の当事務所にも、固定資産税の通知が届く4月や、お盆に実家へ帰られたあとに、このご相談が寄せられます。





数次相続とは、どういう状態を指すのですか


最初の相続の手続きが終わらないうちに、その相続人が亡くなって次の相続が始まった状態です。ひとつの不動産に、二つ以上の相続が積み重なっている形とお考えください。


法務局の記載例は「第1の相続が開始し、その相続の登記が未了の間に、その相続人が死亡して第2の相続が開始した場合」と説明しています(法務局「登記申請書の記載例(遺産分割・数次相続)」)。たとえば、10年前にお父さまが亡くなり、ご自宅の名義をそのままにしていたとします。相続人はお母さまと長男・長女のお三方でした。話し合いが進まないうちにお母さまが亡くなると、お母さまが持っていた「お父さまの相続人としての立場」は、お母さまの相続人へ移ります。


代襲相続とは、どこが違うのですか


亡くなった順番が違います。代襲相続は、お子さまが被相続人より先に亡くなっていたときに、お孫さまが代わりに相続人となる形です。数次相続は、いったん相続人になった方が、その後に亡くなった形を指します。


順番が違うと、誰が加わるかも変わります。代襲相続では、先に亡くなったお子さまの子、つまりお孫さまが相続人の列に並びます。お子さまの配偶者は入りません。いっぽう数次相続では、あとから亡くなった相続人の配偶者もお子さまも、その方の相続人として立場を引き継ぎます。お嫁さんやお婿さんが話し合いの当事者になるのは、この形のときです。


話し合いに加わる方は、どこまで増えるのですか


亡くなった相続人の立場は、その方の相続人へそっくり引き継がれます。遺産分割の協議には相続権のある方の全員が加わることになりますので、代替わりが進むほど当事者が広がっていきます。


法務局の案内は「相続権のある者全員が参加する必要があります。そのため、一部の者が参加しなかった協議は無効です」と説明しています(法務局・東京ブロック「相続登記ガイドブック(詳細編)Q&A編」)。全員がそろわない協議は効力を持ちませんので、一人でも連絡が取れない方がいると、そこで前に進めなくなります。相続が二度重なれば、当事者は二乗のような形で広がっていきます。三度重なれば、いとこ同士やそのお子さまの世代まで及ぶことも珍しくありません。


私がこれまでにお受けした中では、相続人が60人を超えた相続登記を担当したことがあります。もとは昭和の時代に亡くなった方の田畑で、名義をそのままにしているうちに二度、三度と代替わりが進んでいました。北海道から九州まで戸籍と附票をたどり、お一人ずつ手紙を差し上げるところから始めています。最初の相続のときであれば、ご兄弟三人の署名で済んでいた手続きでした。※事例は個人情報保護のため一部を改めています。


登記は1件で済むのですか、2件に分かれるのですか


中間の相続で権利を取得した方がお一人だけであれば、1件の申請でまとめて登記できます。中間で複数の方が権利を取得している場合には、申請を分けることになります。


法務局の記載例は「最終の相続以外の相続について、共同相続人数名が権利を取得している場合には、一件の申請では登記することができません」と注意を添えています(法務局「登記申請書の記載例(遺産分割・数次相続)」)。どういう場合に中間がお一人になるのかについて、法務局・東京ブロックの案内はこう説明しています。「最初の相続(問いでは、祖父死亡による相続)が単独相続である場合(遺産分割、相続放棄又は他の相続人に相続分のないことによる単独相続を含む。)に限り、登記原因及びその日付を連記した上で、登記名義人から最終の相続人名義に直接相続登記を申請することができます」(同ガイドブックQ28)。


読みどころは、かっこ書きの部分です。もともとお一人しか相続人がいなかった場合に限らず、遺産分割の話し合いの結果として中間の方がお一人で取得した場合や、ほかの方が相続放棄をした場合も含まれます。つまり、話し合いの組み立て方しだいで、申請の形が変わってきます。


実際の申請書では、登記原因の欄に二つの相続を続けて書きます。法務局の記載例では「平成2年3月21日法務春夫相続 令和7年6月20日相続」という形で、最初の相続の日付と亡くなった方のお名前、続いて次の相続の日付を並べています。


書類の準備も費用の計算も変わりますので、戸籍がそろった段階で、どちらの形になるのかを見立ててからお見積りをお出ししています。



相続登記の義務は、どのように及ぶのですか


令和6年(2024年)4月1日から、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務づけられました。施行日より前に開始した相続も対象で、期限は令和9年(2027年)3月31日です。


法務省「相続登記の申請義務化について」は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました」と説明し、「正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象となることとされました」としています。過料に至る流れは、登記官が催告書を送り、期限内に登記がされないときに裁判所へ通知し、裁判所が判断するという三つの段階です(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。


令和9年3月31日まで、この記事を書いている時点で約6か月半です。数次相続のご相談は、戸籍の取り寄せだけで数か月かかることもありますので、ゆとりを持って動いていただければと思います。


話し合いが期限に間に合いそうにないときは、相続人申告登記という方法があります。登記簿上の所有者の相続人であることを登記官に申し出ておくと、申し出た方については義務を果たしたものとして扱われます。根拠は不動産登記法第76条の3で、登録免許税はかかりません。ただし権利関係を公示するものではありませんので、売却や抵当権の設定に進むときには、あらためて相続登記が要ります。



遺産分割の10年のルールは、数次相続でどう効きますか


相続開始から10年を過ぎると、遺産分割は具体的相続分ではなく法定相続分によることになります。令和5年(2023年)4月1日に施行された改正で、古い相続を抱えているご家庭ほど、この区切りが近づいています。


法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」は「相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)による」としています。具体的相続分というのは、生前の贈与や介護などの貢献を考え合わせて調整した取り分のことです。10年を過ぎると、その調整を持ち出せなくなります。


数次相続では、この点がとくに重く働きます。最初の相続が20年前、30年前ということも珍しくないからです。「兄は家を建てるときに援助を受けている」「自分は最後まで介護をした」というお気持ちがあっても、期間を過ぎていれば、その事情を分け方に反映させにくくなります。


例外として、10年が経つ前に相続人が家庭裁判所へ遺産分割を求めた場合などが定められています。ただし、これは家庭裁判所の手続きにあたりますので、ご事情によっては弁護士へのご相談が適しています。



令和8年10月5日から、申出に何が加わりますか


所有権の移転の登記を申請するときに一緒に申し出る検索用情報に、国籍等が加わります。相続による所有権移転登記も対象ですので、秋以降の申請に関わってきます。


法務省は、相続登記の申請や相談の際に準拠法を確認することで「適正かつ円滑に相続登記を実施することができます」と説明しています(法務省「検索用情報の申出について」)。検索用情報の申出は、令和7年(2025年)4月21日から始まった仕組みです。申し出る項目は、氏名、氏名の振り仮名、住所、生年月日、メールアドレス、そして国籍等の6つです。


この記事の公開時点で、令和8年10月5日まであと半月ほどです。法務局の申請書様式のページには、その日以降に申請する場合の様式が、数次相続の記載例も含めてすでに掲載されています(法務局「不動産登記の申請書様式について」、更新日は令和8年9月11日)。秋以降に申請をお考えの方は、古い様式のまま準備を進めないよう気をつけてください。



よくあるご質問


数次相続のご相談で多いのは、相続放棄ができるのか、面識のない方に連絡してよいのか、相続人に判断の難しい方がいるときはどうするのか、という3点です。順にお答えします。


父の相続を、いまから放棄できますか


相続放棄には期間の定めがあります。裁判所の案内では「相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に,単純承認,限定承認又は相続放棄をしなければなりません」とされています(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。数次相続では、いつを起算点と見るかが事案によって分かれますので、自己判断で結論を出さず、早い段階でご相談ください。期間の伸長を家庭裁判所へ申し立てる方法もあります。


面識のない相続人に、どう連絡すればよいですか


戸籍の附票で現在のご住所をたどり、お手紙を差し上げるところから始めます。自己紹介、亡くなった方とのご関係、相続が起きた事実、相続関係説明図、返信用の封筒を同封するのが通例です。いきなり書類への署名をお願いするのではなく、まず事情を知っていただく姿勢で書きます。


相続人の中に、判断が難しくなっている方がいます


遺産分割の話し合いには、ご本人の判断能力が前提になります。認知症などで難しい状態のときは、家庭裁判所に成年後見人等の選任を申し立てたうえで進めるのが原則です。ご家族だけで署名を代行することはできませんので、この点は早めに手立てを考えておいてください。



まとめ


数次相続は、手続きが消えたのではなく、次の世代へ引き継がれて残っている状態です。中間の相続で権利を取得した方がお一人であれば、1件の申請でまとめて登記できるという取扱いも用意されています。どの形になるのかは、戸籍を並べて、話し合いの組み立てを考えたうえで見えてきます。


令和9年3月31日という期限と、令和8年10月5日からの様式の切り替わりが、いま同時に近づいています。ご自宅の権利証や固定資産税の通知書を引き出しから出して、名義がどなたになっているかを確かめるところからで構いません。判断に迷われたときは、名古屋市東区白壁の当事務所へお気軽にご相談ください。愛知・岐阜のご相談も承っています。



出典




この記事は 2026年9月18日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは法務局・税務署等でご確認ください。



本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。



監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)

司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。

相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。

最終更新日:2026年9月18日

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