
相続登記にかかるお金は、国に納める登録免許税、書類を集めるための実費、司法書士へお支払いいただく報酬の三つに分かれます。このうち登録免許税は法律で計算方法が決まっていて、相続の場合は固定資産課税台帳に登録された価格の1000分の4です。誰に頼んでも、自分で申請しても同じ額になります。
「相続登記にいくらかかるのか、見当がつかないので相談に行きづらい」というお声を、名古屋市東区の事務所でよくうかがいます。金額そのものより、何にいくらかかるのかが見えないことが不安の正体だと感じています。この記事では、費用の内訳を三つに分け、ご自宅の固定資産税の通知書があればおおよその見当がつくところまでご案内します。
相続登記の費用は、国に納める登録免許税、戸籍や証明書を取り寄せる実費、司法書士の報酬の三つに分かれます。前の二つは誰が手続きをしても同じ額で、事務所によって差が出るのは報酬の部分だけです。
見積書を前にして「これは高いのでしょうか」とご質問をいただくことがあります。そのときは、まず税金と実費に印をつけて、残りが報酬ですとご説明します。税金と実費は、こちらの裁量で増やしたり減らしたりできない、いわば固定費にあたる部分です。ここを切り分けておくと、複数の事務所の見積りを見比べるときにも、比べるべき箇所がはっきりします。金額でいえば、登録免許税が一番大きくなることが多く、不動産の評価額に連動します。
相続を原因とする所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額に1000分の4をかけた額です。この「不動産の価額」は、市町村役場が管理する固定資産課税台帳に登録された価格を指します(国税庁「登録免許税の税額表」)。
ここで間違えやすいのが、どの数字を使うかという点です。法務局は「固定資産課税台帳の価格とは、固定資産課税明細書において、一般的に『価格』又は『評価額』と表記されている価格であり、『固定資産税課税標準額』ではありません」と注意を促しています(法務局「登録免許税の計算」)。住宅が建っている土地は課税標準額が特例で低く抑えられていますので、そちらの数字を使うと税額が実際より小さく出てしまいます。
名古屋市では毎年4月に固定資産税の納税通知書が届きます。同封の課税明細書に「価格」の欄がありますので、そこで計算ができます。手元にない場合は、市税事務所や区役所の税務窓口で評価証明書を取ることになります。名古屋市の評価証明の手数料は1件300円で、土地は1筆、家屋は1個ごと、1年度につき1件と数えます。この手数料は2026年(令和8年)10月1日から1件400円に改定される予定です(名古屋市「市税に関する証明の種類と手数料」)。
売買や贈与で名義を変える場合の税率は1000分の20ですので、相続はその5分の1です(国税庁)。同じ名義変更でも、相続は負担が軽く設定されています。
| 登記の原因 | 所有権移転登記の税率 |
|---|---|
| 相続 | 1000分の4 |
| 贈与・交換など | 1000分の20 |
| 売買 | 1000分の20(土地は軽減措置あり) |
出典:国税庁「登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等)
課税価格は、不動産の価格を合計してから1000円未満を切り捨てます。そこに1000分の4をかけ、出てきた税額の100円未満を切り捨てます。計算した額が1000円に満たないときは1000円です(法務局「登録免許税の計算」)。
数字を入れてみます。土地の価格が1234万5678円、建物の価格が567万8901円だとしますと、合計は1802万4579円です。1000円未満を切り捨てて1802万4000円が課税価格になります。これに1000分の4をかけると7万2096円、100円未満を切り捨てて7万2000円が納める額です。
不動産が何か所かに分かれていても、1件ずつ端数を処理するのではありません。法務局の相続登記ガイドブックは「複数の不動産を相続する場合は、価格を合計してから1,000円未満の端数を切り捨てます」と示しています。共有持分を相続するときは、価格の全額ではなく持分に応じた価格が基になります。
登録免許税の納め方は、銀行などに納付して領収証書を申請書に貼る方法が基本です。税額が3万円以下であるなどの場合には、同じ額の収入印紙を貼って納めることも認められています(法務局)。オンラインで申請するときは電子納付になります。
価額100万円以下の土地の相続登記と、相続で土地を取得した方が登記を受ける前に亡くなった場合の登記は、2027年(令和9年)3月31日まで登録免許税が免税されます(法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」)。
この免税は、黙っていて適用されるものではありません。法務局は、申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」または「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載することが必要だと案内しています。書き漏らせば通常どおり課税されますので、ご自身で申請なさる方は特にご注意ください。100万円以下かどうかは土地1筆ごとに見ますので、宅地は課税されて、隣接する小さな畑や山林は免税になる、という組み合わせも起こります。
以前、名古屋市内のご自宅のほかに岐阜の山あいに先代名義の土地が残っていたご相続をお手伝いしたことがあります。評価証明書を並べてみますと、山林と原野が十数筆あり、そのほとんどが1筆あたり100万円を下回っていました。筆数の多さにご家族は気を重くしておられたのですが、登録免許税がかかったのは宅地と建物だけで、想定より負担は軽く収まりました。※事例は個人情報保護のため一部を改めています。
免税の期限は2027年(令和9年)3月31日です。義務化の経過措置の期限と同じ日ですので、先代名義のまま残っている土地がある方は、この日付を一つの目安にしていただければと思います。
戸籍や住民票、評価証明書を取り寄せる実費がかかります。名古屋市では戸籍全部事項証明書が1通450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本が1通750円、住民票の写しが1通300円です(名古屋市「住民票の写しなどの証明」)。
| 証明書(名古屋市の場合) | 手数料 |
|---|---|
| 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 1通450円 |
| 除籍謄本・改製原戸籍謄本 | 1通750円 |
| 住民票の写し・戸籍の附票の写し | 1通300円 |
| 固定資産の評価証明書 | 1件300円(2026年10月1日から400円) |
出典:名古屋市「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・住民票の写しなどの証明」「市税に関する証明の種類と手数料・必要書類・発行窓口について」
戸籍の附票の写しも1通300円です。1通あたりの金額は小さいものですが、通数は相続の形によって大きく変わります。お子さんがいらっしゃらない方の相続で、ご兄弟やその子まで相続人になる場合、亡くなった方のご両親の戸籍までさかのぼりますので、10通を超えることもあります。転籍を繰り返しておられた方の場合も同じです。愛知や岐阜だけでなく、遠方の市区町村から郵送で取り寄せる場合には、定額小為替の発行手数料と往復の郵便代が加わります。
このほか、登記が完了したあとに登記事項証明書を取得する場合には、別途手数料がかかります。実費の合計は、相続人の人数と本籍の移り方によって幅が出ます。※事案により異なりますので、正確なところは戸籍を集めながらの確認になります。
司法書士の報酬は、それぞれの司法書士が自由に定めることになっています。会則により、額や算定方法、諸費用を明示し、依頼者との合意によって決めます(日本司法書士会連合会)。全国一律の料金表はありません。
報酬に幅が出るのは、手続きの中身が事案ごとに違うからです。不動産の個数、管轄する法務局がいくつになるか、相続人が何人いらっしゃるか、戸籍の収集をお任せいただくか、遺産分割協議書の作成や法定相続情報一覧図の申出まで含めるか。こうした要素の積み重ねで、同じ「相続登記」でも作業量はずいぶん変わります。名古屋市内の不動産1件のご依頼と、愛知と岐阜の3か所の法務局にまたがるご依頼とでは、同じ額にはなりません。
見積りを受け取ったときに見ていただきたいのは、税金と実費と報酬が分けて書かれているか、戸籍の収集が含まれているのかどうか、管轄が増えたときや相続人の調査が長引いたときに追加が生じるのか、という三点です。ここがはっきりしていれば、あとから金額が動いても理由が分かります。当事務所でも、内容をうかがったうえでお見積りをお出ししています。
なお、遺産の分け方について相続人のあいだで意見が割れている場合、その交渉をお引き受けすることはできません。司法書士がお手伝いできるのは、まとまった内容を書面にし、登記に反映させるところまでです。
相続登記を放っておくと相続人が増え、集める戸籍も連絡を取る相手も増えます。2024年(令和6年)4月1日からは3年以内の申請が義務となり、正当な理由なく怠ったときは10万円以下の過料の適用対象とされています(法務省)。
費用の面で効いてくるのは、戸籍の通数です。祖父名義のまま止まっている土地で、相続人が20人を超えていたケースを担当したことがあります。戸籍だけで数万円になり、印鑑証明書をそろえるだけで半年かかりました。同じ土地を、お父様の代で登記していれば、戸籍は数通で済んでいたはずです。※事例は個人情報保護のため一部を改めています。
施行日より前に開始した相続で登記がまだの不動産についても、2027年(令和9年)3月31日までに登記をする必要があります(法務省)。前の章でご説明した免税措置の期限とも重なります。年末年始やお盆にご家族が集まったときに、名義の話をひととおり確かめておかれると、慌てずに済みます。
費用について、ご相談のなかでよくいただくご質問をまとめました。細かな点はご事情によって変わりますので、目安としてお読みください。
課税明細書の「価格」または「評価額」の欄であれば、その金額で計算できます。「課税標準額」の欄は住宅用地の特例などで低くなっていることがあり、登録免許税の計算には使えません(法務局)。
価格を合計してから1000円未満を切り捨てます。1件ずつ処理するわけではありません(法務局)。
なりません。持分に応じた価格を合計したものが課税価格になりますので、1人の名義にする場合と合計額は変わりません。
不動産の所在と個数、相続人の人数がお分かりであれば、おおよその見通しはお伝えできます。会則により、報酬の額や算定方法をお示ししたうえでお引き受けすることになっています(日本司法書士会連合会)。
相続登記の費用は、固定資産課税台帳の価格が分かればその大半が計算できます。4月に届く納税通知書をとっておくこと、先代名義の土地がある方は評価証明書を1年度分だけでも取ってみること。この二つで全体像はかなり見えてきます。金額を知ったうえで段取りを決めたいという段階でのご相談も承ります。まずはお気軽にご相談ください。
この記事は 2026年9月12日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは法務局・税務署等でご確認ください。
本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。
監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)
司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。
相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。
最終更新日:2026年9月12日