「戸籍の集め方|広域交付で変わったこと、変わらないこと」

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2026年09月07日

「戸籍の集め方|広域交付で変わったこと、変わらないこと」

名古屋のやさしい相続相談室|司法書士法人白壁事務所(しらかべ)

相続登記に必要な書類は、亡くなった方の戸籍、相続人の戸籍と住民票、遺産の分け方を示す書類の三つに整理できます。このうち手間がかかるのが戸籍で、ここで手が止まってしまう方が多くいらっしゃいます。お盆に帰省してご家族で話が出たものの、九月に入ってもまだ何も動けていない、というご相談も季節柄よくうかがいます。





必要書類は「遺産分割」「法定相続分」「遺言書」の三つで変わります


相続登記の必要書類は、遺産分割協議による場合、法定相続分どおりに登記する場合、遺言書がある場合の三つで変わります。どの場合にも共通するのは、亡くなった方の戸籍と住民票の除票、新しく所有者になる方の住民票、そして固定資産課税明細書です。


違いが出るのは、遺産の分け方を裏づける書類です。話し合いで分け方を決めたのであれば遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を、遺言書があるのであれば遺言書そのものを添えます。法定相続分どおりに相続人全員の共有名義で登記するのであれば、そのどちらも要りません(法務局「相続登記に必要な書類一覧」)。







分け方追加で必要になる書類
遺産分割協議による遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書
法定相続分どおり追加の書類は不要です
遺言書がある遺言書(自筆証書は自宅等または法務局、公正証書は公証役場)


亡くなった方について集める書類


亡くなった方については、出生から死亡まで在籍していたすべての戸籍・除籍謄本と、登記簿上の住所および本籍地の記載がある住民票の除票または戸籍の附票を集めます。登記簿に載っている名義人と、亡くなった方が同じ人であることを登記所に示すためです。


住民票の除票がなぜ要るのか、不思議に思われるかもしれません。戸籍には本籍しか載らず、登記簿には住所しか載りません。両方が書かれた住民票の除票や戸籍の附票が、その二つを結ぶ橋渡しの役割を果たします。


法務局の一覧では、この住民票の除票または戸籍の附票について「登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの」と示されています。窓口で請求するときに、この一文をそのまま伝えると話が早く進みます。



相続人と新しい所有者について集める書類


相続人については、亡くなった方の死亡日以降に発行された戸籍謄本が必要です。相続が始まった時点で生きていたことを示すためです。加えて、その不動産を取得して新しく所有者になる方の住民票を用意します。


遺産分割協議で分け方を決めた場合は、協議書に押した実印について、相続人全員の印鑑証明書を添えます。この印鑑証明書には、作成後3か月以内といった制約はありません(法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」)。



戸籍はどこまで集めるのか


出生まで、というのが答えです。結婚や転籍、戸籍の改製でお一人の戸籍が何通にも分かれるため、切れ目なくつなげて初めて、ほかにお子さんがいないことを確かめられます。お子さんがいない相続では、親や兄弟姉妹へとさかのぼります。


「子どもは私たち兄弟の二人だけです」とお聞きしていても、登記所は戸籍でしか判断しません。前の婚姻での子や認知された子がいないかどうかを、書類の上で確かめる必要があります。ご家族を疑うための手続きではなく、あとから相続人が現れて登記が覆ることを防ぐための手続きだと考えていただければと思います。


私自身、大正期に作られた手書きの改製原戸籍にたどり着き、毛筆の崩し字を読み解くのに数日かかったことがあります。転籍を繰り返しておられた方で、最終的に5つの市町村に請求することになりました。ご相談をいただいてから戸籍がそろうまでに、2か月ほどかかりました。※事例は個人情報保護のため一部を改めています。



広域交付で変わったこと、変わらないこと


2024年(令和6年)3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できます。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、郵送や代理人による請求はできません(法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」)。


名古屋市東区にお住まいで、本籍が岐阜や県外にあるという方にとって、この改正の恩恵は小さくありません。区役所の窓口で、離れた本籍地の分もまとめて請求できるようになったからです。運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの本人確認書類を持って窓口へ行く必要があります。


一方で、変わらなかった点にも注意が必要です。ご自身で動いていただく分と当事務所にお任せいただく分を、最初に分けておくと段取りが楽になります。兄弟姉妹の戸籍は直系ではないため対象外で、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍も請求できません。私どもが代理でお集めする場合も、この制度は使えませんので、本籍地の市区町村ごとに郵送で請求していく形になります。



自分で作る書類と、戸籍を返してもらう方法


集める書類のほかに、自分で作る書類が3つあります。登記申請書、遺産分割協議書、そして相続関係説明図です。相続関係説明図を提出しておくと、登記所での調査が終わったあとに戸籍の証明書の還付を受けられます。


この還付の仕組みは、実務ではとても大切です。戸籍は預貯金の解約や相続税の申告でも使いますので、登記所に出したまま返ってこないと、また一から集め直すことになってしまいます。相続関係説明図は、亡くなった方と相続人の関係を家系図のように一枚にまとめた書類です。


遺産分割協議書は、どの不動産を誰が取得するのかを特定できるように書きます。登記簿の記載にそって、所在、地番、地目、地積などを書き写します。「実家の土地と建物」といった書き方では、どの不動産を指すのかが確定できず、登記に使えません。



固定資産課税明細書と登録免許税


固定資産課税明細書は、登記申請をする日の属する年度のものが必要です。相続による所有権移転の登録免許税は不動産の価額の1000分の4で、計算した額が1000円に満たないときは1000円になります(国税庁「登録免許税の税額表」)。


愛知県内であれば、毎年4月ごろに市町村から届く固定資産税の納税通知書に、この課税明細書が同封されています。捨てずに取ってある方は、まずそれを探してみてください。見当たらない場合は、市町村の窓口で評価証明書を取得します。


登録免許税には免税の措置もあります。不動産の価額が100万円以下の土地については、2027年(令和9年)3月31日までの間に受ける相続による所有権移転の登記について、登録免許税を課さないこととされています。相続によって土地を取得した方が登記をしないまま亡くなった場合の免税措置も、同じ期限まで設けられています(法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」)。山林や私道の持分など、価額の小さな土地が含まれているときは確認しておきたいところです。



戸籍の束を何度も出さずに済ませる


集めた戸籍を一度法務局に提出して法定相続情報一覧図の写しの交付を受けておくと、そのあとは戸除籍謄本の束の代わりに、この写しを各所へ提出できます。交付の手数料は無料です(法務局「法定相続情報証明制度について」)。


銀行や証券会社など提出先が多いご相続ほど、後の手間が減ります。申出をする登記所は、亡くなった方の死亡時の本籍地、最後の住所地、申出をする方の住所地、亡くなった方名義の不動産の所在地を管轄する登記所のいずれかから選べます。委任による代理人には、親族のほか、司法書士や弁護士などに依頼できるとされています(法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」)。



期限から逆算して、いつ動き始めるか


相続登記は、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務づけられています。正当な理由なく怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象とされています(法務省「相続登記の申請義務化について」)。


期限の起算点は、法務省の表現では「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日」とされています。この義務化は2024年(令和6年)4月1日に始まりました。施行より前に開始した相続についても対象で、こちらは2027年(令和9年)3月31日までが期限とされています。今日から数えると、半年余りという長さになります。


戸籍集めに1か月から2か月、遺産分割の話し合いにさらに時間がかかることを見込むと、四十九日を過ぎたころに戸籍の請求を始めるくらいの間合いが、気持ちの上でも無理がないように思います。年末年始やお盆にご家族が顔を合わせる機会を、話し合いの場に充てておられる方も多くいらっしゃいます。


書類がそろうか不安な段階でも、手ぶらでご相談いただいて構いません。登記簿と固定資産税の納税通知書だけお持ちいただければ、何をどこまで集める必要があるのかを、その場でお伝えできます。



よくあるご質問


相続登記の書類について、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。いずれも法務局や法務省が示している取扱いをもとにお答えしています。


戸籍は何通くらい必要になりますか


その方の転居や婚姻の経緯によって変わりますので、一概には申し上げられません。数通で済む方もいれば、十数通になる方もいらっしゃいます。まずは死亡の記載がある戸籍を取り、そこに書かれた「従前戸籍」の欄をたどってさかのぼっていきます。


印鑑証明書に有効期限はありますか


遺産分割協議書に押した印鑑についての印鑑証明書には、作成後3か月以内といった制約はないとされています(法務局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」)。ただし金融機関の相続手続きでは期限を設けていることが多いため、他の手続きと並行するのであれば新しいものを用意しておくと安心です。


兄弟姉妹の戸籍も、近くの窓口で取れますか


広域交付で請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の分に限られており、兄弟姉妹の戸籍は対象外です(法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」)。お子さんのいない方の相続では兄弟姉妹の戸籍が必要になりますので、本籍地の市区町村へ請求することになります。


遺言書がある場合も、出生からの戸籍が必要ですか


法務局が示す一覧では、遺言書がある場合について「死亡の事実の記載がある戸籍・除籍謄本が必要」とされており、出生までさかのぼる必要はないものとして整理されています。ただし遺言の内容や不動産の状況によって扱いが変わることもありますので、事前にご確認ください。



まとめ


相続登記の書類集めは、亡くなった方の戸籍を出生までさかのぼるところが山場です。広域交付を使えるご家族の分はご自身で窓口へ、兄弟姉妹の分や古い戸籍は専門家へと分担すると、動きが速くなります。


まずは、お手元の固定資産税の納税通知書と、亡くなった方の死亡の記載がある戸籍を一通、取り寄せるところから始めてみてください。そこから先の道筋は、その二つを見れば大方が見えてきます。ご不明な点がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。



出典




この記事は 2026年9月7日 時点の情報です。制度や手数料は改正されることがありますので、最新の取扱いは法務局・税務署等でご確認ください。



本記事は登記手続と書類作成の観点からの一般的な解説です。相続人のあいだで争いがある場合は弁護士へ、相続税・贈与税など税務は税理士へご相談ください。個別の事情によって結論は変わります。



監修:司法書士 市川貴史(愛知県司法書士会 登録番号 愛知第1239号)

司法書士法人白壁事務所(しらかべ) 代表社員。名古屋市東区白壁。司法書士歴20年以上。

相続・遺言・家族信託・成年後見・不動産登記・商業登記を扱っています。

最終更新日:2026年9月7日



相続登記の必要書類でお困りのことがありましたら、司法書士法人白壁事務所(しらかべ)(名古屋のやさしい相続相談室)へ、まずはお気軽にご相談ください。名古屋市東区白壁の事務所で、愛知・岐阜のご相談をお受けしています。

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